和多商貿有限会社
上海和多旭商貿有限公司 大連博大商貿有限公司
総裁 和多 東秀氏
<今回の企業>
大手電気メーカーを2005年3月に退社した後、自身の夢をかなえるため中国に出てこられた和多氏。まず大連に、そのあと上海に事務所を設立。中国でカーナビゲーションの発売を中心にした事業をされている。韓国でも仕事をされているため、いろんな角度から見た日本と中国の話をうかがうことができた。
<前回のつづき>
―日本と違う点、苦労されたことなどを教えてください。
何より言葉ですね。特に上海は上海語なので、まったくわかりません。広東省でもそうですが、都合が悪くなると方言。うちは社内では上海語は禁止しているのですが、それでもやはりたまに出ていますね。
認可などは特に問題はありませんでした。私は中国とは25年の付き合いがありますので、これまでに培った人脈がいろんなところにあります。そのためまったく苦労はしなかったですね。中国の社会は本当に人脈とお金だと感じます。中国に出てきて失敗する人が非常に多いですが、これが原因でしょうね。
日本の人はよく中国人は人をだます、と言いますが、中国人も韓国人も日本人もみんな一緒、だます人はだますし、だまさない人はだまさないんです。こちらが信頼しないと向こうだって信頼してくれません。付き合い方さえ間違わなければきちんと人脈もできます。
―では何か心がけていらっしゃることはありますか?
日本にいたころ部下にもいつも言っていましたが、人の心の痛みがわかる人間になりたい。自分自身もそうありたいし、みんなになってほしいと思います。それを心がけていたので今の自分があるのではないかな、と思っています。
私は小学4年生のときに父親を亡くしたんですね。母親も病気がちでしたので、このころからずっと本当にいろんな思いをしました。友達もできない、いじめられる。「俺はお前たちと一緒に遊びたい。でも遊べないんや。新聞配達に行かんと飯が食えないんや」。そういった思いが常にありました。そういう思いをしてきたから、たとえば誰かと話をするにしても相手の心の痛みを理解し、それによって言い方などを変えることが大切だと考えています。そうすると相手も感じてくれます。それが信頼関係のキーポイントじゃないかな、と思いますね。
たとえば取引先の代理店に対しても、買いたいけどお金がないということがわかったとき、じゃあこういう支払いの方法にしましょうか、とこちらから提案する。相手はお金がないとは言わないですね。中国人はプライドが高いから。相手の気持ちを感じ取って対応することが大事ではないかなと思います。それはどこの国でも同じです。
―大連にも行かれているということですが、中国の中でも上海との違いを感じられますか?
大連はもともと日本の文化の影響が強いところなのですね。昔は日本の工場関係が多かったのですが、今は観光とIT産業が主です。ただ非常に環境がいいですね。海が近くて緑も多い。交通マナーも上海に比べてものすごくよくて、入り込みやすかった。日本人が事業するにしても何にしても入りやすい土地だと思いましたね。
人も違うな、と感じました。上海人はすごくプライドが高いと思います。ただ、国際ビジネスという見方をしたときは上海はやりやすい土地だと思います。やはり中国の中で1番そういった点での理解力だとか、外資系の企業が入ってきやすい文化ができていますね。
―では日本、中国、また韓国でも仕事をされているうえで、何か違いは感じられますか?
私の感じたことですが、この3つの中で日本人は日本が1番上だと思っています。韓国は中国より上だと思っている。中国は韓国より上だと思っている。ですから韓国と中国をからめて仕事をするというのは非常にやりづらいですね。どちらもプライドが高い。韓国はバブルが崩壊して、日本と同じように落ち着いてきたところです。もう成長は少ない。
中国は今伸び盛りですから、その差があると思います。
ナビゲーションの技術に関しては、中国よりまだ韓国のほうが上ですから韓国で開発しましたが、私は中国がどう、韓国がどう、日本がどう、とは思っていません。意識したことはありませんね。出身が福岡ですが、東京へ行くより韓国、中国へ行くほうが近いのですね。だから国内と同じような気持ちでみな付き合っています。国籍を意識することはあまりありませんね。
―日中韓の関係について何か思われることはありますか?
中国人も韓国人も自分が困った立場になると、日本人が悪い、悪いことばっかりしてきて、といった言い方をします。そんなときは、過去の歴史とビジネスと何の関係があるんだ、と思いますね。過去のことにこだわっていて仕事ができますか、と。韓国でも中国でも何度も口争いをしたこともあります。そんなにも日本人が信じられず疑いながら仕事していても、ビジネスがうまくいくわけがないと思いますね。特にこういう高い技術の商品を進めていくうえでは、信頼関係がないと開発もまともに進みません。
けれどちゃんと話をすれば彼らもわかってくれる。そういった話が出たときに、日本人は過去に悪いことをした、それはもちろん認めます。けれど、じゃあチンギスハンはどうなの、何千人もの耳を切り取って置いたりしたのではないですか、となります。国取り合戦の中でそういった過去の歴史がある。過去のことを今の問題を重ね合わせて言うのはよくないのではないでしょうか。確かに靖国のことなどいろいろ問題はありますが、それは政府の問題であって、私自身の問題ではない。小泉首相が参拝したのであって、私がしたのではない。あなたは小泉首相とビジネスをしているのではないでしょう、私としているのでしょう、と言うと、笑いながらそうですね、となります。なにごとも言い方ですね。誠意を持って話せばわかってくれます。
ただ、現地の情報が正しく日本側に伝わっていない、これは日本のマスコミ報道が著しく偏っていることが原因だと思われます。ほんの一部分だけをクローズアップしてまさに中国全体がそうであるような報道は良くないですね。
―では今後中国はどのように変わっていくと思われますか?
2008年にある北京オリンピックというのは自動車業界において1番大きなイベントだと思います。オリンピックはいろんなところが会場になるため、人が動きます。自家用車だけでなく、種目によって観光バスが動く、政府関係の車、公安や軍の車が動く。そしてタクシーやレンタカーも利用されます。やはり自動車業界はピークになると思います。ナビゲーションもここで成功していなければおそらくあとはないでしょう。勝負ですね。
またオリンピックでは世界の観光客が来ます。中国は偉大な国ですので世界に認めて欲しいという思いがあるでしょう。マナーやトイレなどの問題も解消されていくのではないでしょうか。また、貧富の差が縮まるか広がるかはわかりませんが、生活環境はよくなっていくと思います。ただ、生活環境がよくなるに伴って競争力は悪くなっていくでしょう。反比例しますね。コストがあがりますから。今、韓国がまさにその状態です。いずれ中国もそうなるでしょうね。発展するのはいいことですが、発展するにしたがって中国の魅力がなくなってしまうように感じます。だからレートの切り上げ問題なども慎重に考える必要性を感じます。
―中国に進出を考えている方にアドバイスなどありましたらお願いします。
アドバイスと言いますか、中国を知らないで中国に来るな、ということは言えますね。中国に出てこようとするのなら、やはり中国のことを勉強してこないと失敗します。人間性の問題にしても、考え方、生活環境、歴史や政治、人脈にしてもお金の流れにしても、そういうことを理解できていないまま出てくる人が失敗しているのだと思いますね。事業を別にして、まずこちらで生活をして、中国と日本の違いを自分で体験しないとだめです。だまされる人はそうなるべくしてだまされていると思います。
日本でもそうですけど、人を100%信用してはだめですね。半分は信じて半分は信用しない、と。そこから人間関係を作っていき、長い間の積み重ねが信頼関係になっていくのです。初めからこの人はこういう人だ、と決め付けてはいけない。1つのことをするにしても何人かの人に相談していろんなやり方があるということを知るのが大事ですね。また、上海にはコンサルティング会社がたくさんあります。しかし私は自分でやりました。どんなことでも自分の体を張ってやるつもりがあれば、何とかなると思いますよ。
―最後に留学生に何か一言お願いします。
今日本にとって1番影響力があるのは中国です。韓国でもアメリカでもない。そうすると貿易業にしてもメーカーにしても全部中国に目が向いているのです。ということは中国の文化を勉強している人、というのは日本にとっても貴重な存在。ただ、日本で勉強している留学生も本当に日本人の話す日本語になっているか、ということですね。中国人がしゃべる中国語を身につけられているかどうか。この会社でもよくあるのですが、私が言っていることを100%理解できていないままわかりましたと言って、違うことをやっている。どうせ留学するのであれば、遊び半分ではなく、真剣に言葉でも文化でも勉強しないと、本当の役には立たないと思います。中途半端な勉強ならしないほうがいいです。なぜ、中国に留学してきたのか。中国に留学した目的は何なのか。その目的に対してさきほど言った顧客満足ができる勉強になっているか。貴重な時間とお金を使ってきているのですから、本当に自分が満足できる留学生活を送ってほしいと思います。
―ありがとうございました。
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※ 2 車速パルスとは、車が移動した距離を知るための信号で、車載のコンピューターより検出する車速センサーからの信号をナビのコンピューターで計算し、常に正確な自車位置を求めるシステム
和多商貿有限会社
上海和多旭商貿有限公司 大連博大商貿有限公司
総裁 和多 東秀氏
取材:津田 昭奈
執筆:津田 昭奈
同行:宮田 正規
<お知らせ>
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