名古屋銀行 上海駐在員事務所 下村
登美夫 所長
http://www.meigin.com/
<今回の企業>
昭和24年の創立以来「地域社会の繁栄に奉仕する」という経営理念のもと、愛知県を中心に国内209カ所 (支店110、出張所1、店舗外現金自動設備98)の店舗、設備を構える名古屋銀行、上海事務所下村所長に中国での業務内容についてうかがった。
<前回のつづき>
―どうして融資額を大きくできないのでしょうか?
今年の4月に外貨の保証が厳しくなり、貸し出し幅が決められていることも原因です。現在、中国国内で短期の対外債務が非常に増えており、これを抑えたいと考えているようです。
外貨による借り入れは短期債務となります。外貨のままでは中国国内では使用できないので人民元を買います。すると、人民元が上昇します。しかし、政府は人民元の上昇を抑えたい。人民元の上昇を抑えるには、ドルを買って元を国内に出さなければならない。すると国内でインフレが起こりますし、不動産などにもお金が流れる、こういった流れを中国側は止めたいがために、外貨に対する規制を厳しくしたのです。そのため、当行も中国銀行に依頼する融資額もそれほど大きくはできないのです。
―貴行も多くの企業の進出を助けてこられたと思いますが、中国に進出してきた企業の成功ポイント、失敗ポイントはどこにあると思われますか?
やはり、合弁企業との人の問題をうまくやっていけた企業は成功しています。逆に合弁先の人とのトラブルがあった会社は失敗する傾向が強いです。特に聞かれる問題は「59歳シンドローム」と言われる現象です。合弁先企業の社長は、いわゆる政府から派遣された公務員ですから、かれらは60歳になると自動的に退職していくのです。なので、退職前に私腹を肥やす人物がいるのです。社員の保険金をプールしていたり、買ったはずの土地が実は担保に押さえられていたりしていたこともあると聞いています。やはり、人との関係をうまく築けた会社は成功していることが多いといえますね。
また、進出も比較的はやく、既に良い商品を作れる基盤ができている企業は、日本への輸出だけではなく、中国内に進出した日本企業からの受注も生まれ始めています。中国国内で生産し、中国国内の日本企業に売るといった成功の形もみられるようになってきました。
―中国国内で中国企業に販売するという形はみられないのですか?
もちろんあるにはあります。しかし、中国企業に販売すると売上金の回収に苦労するために、やはり日本企業に販売する方が販売元企業も楽ですし安心なのです。中国企業の財務担当者においては「いかに払いを遅らせるか」「払いを遅らせられる人物が優秀」という文化がありますから、やはり回収率が日本企業に比べ悪いのです。ですから、販売先はできるだけ日本企業にと考える販売元企業は多いと思います。
―元の切り上げやデモは新たに進出してくる企業に何か影響を与えましたか?
元の切り上げは、当初言われていた数字よりもだいぶ小幅な切り上げでしたので、影響は少ないと思います。デモが実際に行なわれていた期間は、進出が決定した企業も一時進出を見合わせていましたし、カントリーリスクも確かに高まってきたということで、ベトナムなどに進出する企業も出てきました。
―現在の日中関係についての思いをお聞かせください。
日中の交流が切れることはないでしょう。何より今の日中間に必要なことは相手の文化を尊重しあうことだと思います。歴史の問題は時間が経つにつれて少しずつ解決していくのではないでしょうか。
―最後に留学生に向けてアドバイスをお願いします。
最近やはり中国に来る留学生が増えています。彼らには言語だけでなく、文化や人々の生活なども見て学んで帰国して欲しいです。
―ありがとうございました。
名古屋銀行 上海駐在員事務所 下村 登美夫 所長
http://www.meigin.com/
取材:城田 善盛
執筆:高松 俊
同行:小林 直樹
<編集後記>
「駐在員事務所は利益を上げることはできないがお客様の要望に応えていく為に日々活動している」というお話に銀行もサービス業であるということを改めて感じました。お客様から選ばれ続けるためには銀行も例外なく努力が必要なのですね。製造業に限らず様々な業種の企業が中国で一旗あげようと考えているということですが、上海を知るものとして気持ちが分かるような気がします。(城田)
「利益がなくてもお客様によりよいサービスを提供したい」という理由から進出された名古屋銀行のお話からも、日本という国や人々は本当にサービス精神を大事にする国なんだなと感じました。中国に住んでみると日本のサービスの決め細やかさ、さりげない気配りなどがよりいっそう強く感じられます。海外に住むからこそ日本の良さを再確認でき、日本という国をさらに好きになれました。また、逆に悪いところ、変わらなければならないところもよく見えます。やはり日本という国を客観的に見るためには一度海外に住んでみるのがよい方法だな、と思う今日この頃です。(俊)
<お知らせ>
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