福九善貿易有限公司
リサイクル&レンタルショップ フクゼン
http://www.fukuzen.net/jp/050324094824496632.php
総経理 浜口 博務 氏
<今回の企業>
上海在住の日本人に広く親しまれているリサイクル&レンタルショップ「フクゼン」。日用品、電気製品、家具、本など幅広くリサイクル品を扱っている他、レンタルや電気製品修理まで行っている。02年4月に開業したばかりの若い会社でありながら、すでに上海と蘇州に3店舗を構えており、次は北京への進出を目論む。わずか数年で多くの顧客の心を掴んだその秘密とは?創業者である浜口氏に伺った。
―ご自身の経歴と、起業したきっかけをお聞かせください。
私はもともと運輸会社に20年以上勤務していて、駐在員としてさまざまな国を移り住んできました。一つの国に住むたびに生活用品を買いそろえて、駐在期間が終わったら捨てる。そして違う国でまた買いそろえるという生活だったので、それがもったいないと思っていました。
上海にも3年10ヶ月間ほど駐在していたのですが、「ここでリサイクルショップをやったら商売になるかもしれない」と思ったのです。上海に住む5,6万人の日本人のうち、ほとんどは1〜5年で帰国しますし、また新たに来る人もたくさんいます。人の流動が多いということは、リサイクルショップがないと困る人も多いでしょう。やり方さえ間違わなければお客様も喜んで来てくださるだろうと思って、思いきって会社を辞めて02年4月にこの商売を始めました。
―最初に営業許可を取るのに苦労しませんでしたか?
許可を取るのはものすごく苦労しました。リサイクル販売というのは許可がなかなか下りないので、最初は物品販売の許可を取って会社を設立しました。その後、リサイクル販売を営業範囲の中に入れるためにいろんな人に相談しまして、そのうち1人が「なんとかできるかもしれない」と言ってくれたのでお願いし、リサイクル販売の会社を作ることができました。
―店のオープン当初はどのような苦労がありましたか?
最初の頃は、お客様が来てくれても売る物がほとんどない状態でした。開業した4,5月は、時期的に帰国ラッシュが終わった後なので、買い取りの依頼があまりないのです。そこで、日本の100円ショップで買った物を並べておいて、お客様から買い取り依頼の電話が来るのを待っていました。
また、その頃はいくらで買っていくらで売れば適正なのかも、全くわからなかったのです。最初は買い取り価格の2倍で売ればいいだろうと思ってやっていたら、初年度は大赤字になり、本当に苦しかったですね。
オープンして約1年後の03年3月頃、たくさんの人が帰国する時期になって、やっといろんな物を買い取れるようになりました。その頃になると買い方もだいぶわかってきたので、やっと黒字になり始めたのです。
―その後、順調に店舗を拡大できた理由は何だと思いますか?
「この店で物を買うと、もしもの時に安心できる」という信用ができてきたからだと思います。フクゼンは、壊れた時の保証や修理などのアフターサービスは日本のリサイクルショップよりも優れていると自負しています。値段も安いですが、ここで買うと安心だと思っていただけるようになったのではないでしょうか。
この前、帰国直前のお客様が店に電話をくださって、「上海生活が楽しく送れたのも、フクゼンのおかげです」とおっしゃってくれたのです。帰国のシーズンになると、こういうふうにわざわざ電話でお礼を言ってくださる方が結構いらっしゃるので、今やっている方向は間違っていないな、という自信になりますね。
―日本人のお客様はどのくらいの割合を占めているのでしょうか?
日本人の割合は、店舗によって大きく違います。古北万科広場店は日本人が近くにたくさん住んでいるため、8割くらいが日本人です。倉庫店の場合、日本人客は3割くらいで、地元の中国人が3割以上はいますね。他は韓国、香港、台湾の方などです。
倉庫店は家具を多く置いているので、大家さんや不動産会社の人が買っていったり、企業が事務所用に買っていったりするケースも多いようです。蘇州店では、4割くらいが日本人ですね。3割くらいが地元の中国人で、残りの3割が韓国、台湾、香港、欧米系です。
―フクゼンでは非常にたくさんの商品やサービスを扱っていますが、収益のメインになっている物は何ですか?
冬に売れるこたつやホットカーペットが収益のメインになっています。例えば、こたつは安い物でも750元、高い物は1300元くらいしますが、1年で300〜500台売れますね。11〜1月くらいはそれで利益が出て、3、4月は買い取りが多いのでお金がたくさん出ていきます。そして、5,6月は新しく上海に来た人たちがたくさん買ってくれるという流れです。それを除いた月はトントンくらいになっています。
夏は特にこれという売れ筋はないですが、しいて言えば浄水器関係が売れています。本当は、夏場に売れる商品も何か用意しなければならないのですが。やはり季節商品は売れ行きがよいですから。あとは、古北万科広場店で圧倒的によく売れているのが中古本です。例えば、日本で2000円の本を大体30元で売っています。よその店ですと、2000円の新品の本は、関税や運賃がかかるため200元くらいです。このようにフクゼンでは価格が断然安いため、小説、趣味、漫画などの娯楽用の本がよく売れています。
―リサイクル品だけでなく新品も売っていますが、どちらの売上が大きいのでしょうか?
実はリサイクル品の売上はあまり多くなくて、新品の売上が7割くらいを占めています。なぜかと言いますと、お客様が欲しい物がリサイクル品にないことが多いからです。お客様が欲しい物を置いていないのは非常に申し訳ないので、新品も置いて品揃えをよくしています。
しかも、ただメーカーから仕入れるだけでなく、メーカーにOEM(相手先ブランドによる販売を目的とした製造)で作ってもらって「フクゼン」のブランドで販売するということもしています。例えば、現在OEM商品は変圧器だけですが、これからさらに増やしていこうと計画しています。
―現在3店舗出しておられるわけですが、売上はどこが一番大きいのでしょうか?
売上高ですと古北万科広場店が圧倒的に多くて、2番目が倉庫店、3番目が蘇州店となっています。ただ、蘇州は上海と比べて家賃や電気代などが安い所なので、蘇州店は経費が安く上がりますね。
―今後の新規出店については、どのように考えておられますか?
基本的には日本人学校のあるところに出店したいと思っています。なぜかというと、フクゼンのお客様のほとんどが主婦とそのお子様なので、単身赴任ではなく家族で上海に住んでいる方が多い場所がいいからです。すでに出店している蘇州も、今年4月に日本人学校ができた影響で日本人家族が増えてきていますね。日本人学校があるかどうかの他には、日本人が何人くらい住んでいるかも選択基準です。次に店を出す場所は、北京を考えています。その次に広州か深センのどちらかでしょう。
―地理的に離れた場所にある店を運営するのは大変だと思いますが、どのような工夫をされていますか?
難しい問題なので一言では言えませんが、コンピューターを使った商品管理ですとか、従業員の応対の仕方などをシステム化することが大事ですね。例えばケンタッキーが世界中で同じようなサービスをしているのと同じように、うちも全店で同じようなサービスができるようマニュアル化されたものを北京に持っていくわけです。それが蘇州店ではできているので、北京でもできるという自信があります。
―フクゼンでは会社設立代行もされていますが、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか?
リサイクルショップとは別会社で、1年くらい前から会社設立の代行をやっています。もう100社以上の会社設立を代行していて、その業種もさまざまです。例えば、食品販売会社の設立でしたら衛生許可を取ったり、アルコール販売の場合はアルコール販売の許可を取ったりといったことをします。会社設立依頼を受けたら、そういう各部門に行って申請して、許可をもらうという形で会社を作っています。
―会社設立代行でたくさんの会社を見てきた中で、中国で成功する会社とそうでない会社の違いは何だと思われますか?
従業員とコミュニケーションが上手く取れていない会社は失敗していますね。自分が社長だということで、中国人従業員の意見を聞かずに、社長が全て判断するような会社はすぐつぶれます。とことん従業員の話を聞いてあげるということと、「中国で金儲けをさせてもらっている」という気持ちを持つことが大切ですね。彼らは日本とは違う中国流のやり方を教えてくれますから、それを聞かなければなりません。
―その他に、これから起業する人に向けてアドバイスはありますか?
お金儲けというのは日本でも中国でも非常に難しいことです。「1000万円あるから中国で料理屋でもやってみようか」などという安易な気持ちで来られる方がたくさんいますが、結局「騙された」と言って帰ることが多いのです。そういう人は考えが甘いですね。忍耐も必要ですし、どうしたらもっとよくなるかを常に考えて、自分で行動しないと成功できません。成功への道のりは厳しくて、そういったことをきちんとやっていても、アイディアが悪かったらやっぱり失敗します。ですから、よく調べて投資するかどうか決めなければなりません。フクゼンにも「一緒に北京で事業をしませんか」とか「この事業に10%投資しませんか」という話はたくさん来るのですが、ほとんど投資したことがありません。そういう話を聞いていても「甘い」と感じることが多いですね。そんなに簡単にお金儲けはできないと思います。
そういう話を判断するときは相手の人格を見て、それからアイディアを見ます。どちらも優れているような投資先は、こちらから「投資したい」と持ちかけても断られますね。そういう断っている会社は大体成功しています。
―上海に住んでいる方に、楽しく暮らすためのアドバイスはありますか?
中国人のことを悪く言ったり、偉そうな態度をとったりする日本人が多いですが、日本人と接する時と同じように接したほうがいいと思いますね。例えばフクゼンのお客様でも、最初私を中国人だと思ってすごく偉そうな態度をとっていたのに、私が日本人だとわかると、ころっと態度を変える方がいらっしゃいます。そういったことはしないほうが、もっと楽しい生活ができると思います。あと、お金を絶対に貸さないことです。もし返ってこなかったときに、中国人のことを嫌いになってしまうかもしれません。それよりは、初めからお金を貸さないほうがいいと思いますね。
―ありがとうございました。
福九善貿易有限公司
リサイクル&レンタルショップ フクゼン
http://www.fukuzen.net/jp/050324094824496632.php
総経理:浜口 博務
(古北万科広場店)上海市古北新区栄華西道19弄5号金獅公寓102室
営業時間(年中無休)9:00〜21:00
Tel 021-6295-1071 021-6295-1072
Fax 021-6295-1072
(倉庫店)上海市万源路175弄倉庫53号
営業時間(年中無休)9:00〜20:00
Tel 021-5422-2899 021-6401-4512
Fax 021-6401-4512
(蘇州店)蘇州市高新区ドン蔚路・美の苑2-108
営業時間(年中無休)10:00〜21:00
Tel 0512-6807-9227 0512-6807−2792
取材:山下、秋貞
執筆:山下、秋貞
<編集後記>
お店の中には、本当にたくさんの商品が溢れていました。あんなものからこんなものまで、ここは宝探し気分を味わえますよ。是非一度ご利用なさっては!?それにしても、仕事を通してリサイクルを行いエコロジーに貢献する。本当に素晴らしいと思います。中国でも、こういったお仕事を見て、環境意識が高まっていけばと思います。(秋貞)
日本でも中国でもお金儲けは非常に難しいんだ、と浜口氏はおっしゃいました。中国で起業を目指す日本人は多いですが、中国だろうが日本だろうが、どこでやっても商売というのは非常に厳しいものだということは変わりません。言われてみれば当たり前のことですが、中国経済の急成長に目を奪われて甘い認識で起業してしまう人を多く見てきたからこそ、浜口氏は改めてこの点を強調されたのでしょう。今回のインタビュー中、最も印象に残った言葉でした。(山下)
<お知らせ>
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