九州電力株式会社
http://www.kyuden.co.jp
所長 青柳哲之氏
「エネルギーの最適な利用方法を提案する!」
<今回の企業>
ここ数年、京都議定書、洞爺湖サミット開催など国家間の一大イベントにおいて「環境」に関する議論が益々注視されつつある。一方で、政府や民間企業が環境問題に対してどのように取り組んでいるのか、一般市民に浸透していないのが現状だろう。
今回は、福岡県中小企業振興センター上海代表処の代表で九州電力上海事務所所長である青柳哲之氏に省エネルギー・環境関連事業についてお話を伺った。
―所長のご経歴を教えてください。
1995年に九州電力に入社、熊本県の苓北発電所発電課に所属し、3交替勤務をしながら火力発電設備の運転・監視業務に従事しました。日立市の日立製作所株式会社に出向を経て、九州電力火力部において発電所建設に関する計画、設計などの業務を担当、その後、九州電力の関連会社である西日本環境エネルギー株式会社に出向し、宮崎県にある養鶏農家からの鶏糞を燃料とする発電所(みやざきバイオマスリサイクル)の運営業務のほか、中国内蒙古自治区における風力発電の風況調査業務を担当しました。この風況調査の経験が中国と出会うきっかけとなり、2007年7月から福岡県中小企業振興センター上海代表処の代表で九州電力上海事務所所長を務めています。
―御社の企業概要を教えて下さい。
弊社は1951年に設立され、本社は福岡県にあります。発送配電一貫体制で九州全域に電力を供給しており、発電所は現在では水力発電所が138箇所、火力発電所が10箇所、地熱発電所が6箇所、原子力発電所が2箇所あり、その他離島の発電なども行っています。保有する送電線の長さは合計で9,886km、配電線の長さは合計で134,896kmもあります。
2003年8月から福岡県が運営していた「福岡県中小企業振興センター上海代表処」に福岡市、北九州市及び弊社が、2005年7月に参加しました。構成としましては福岡県、福岡市、北九州市、弊社の日本人スタッフ各1名、中国人スタッフ6名、中国人アドバイザー1名の計11名です。
―御社上海事務所の業務内容を教えて下さい。
主な業務は4つあり、@エネルギー環境分野の情報収集、A出張者のサポート、B現地の交流先での情報交換、C中国事業への対応準備としての人材育成です。実際の事業検討などは本社の担当部門が行っており、通常現地のお客様との連絡などを九州電力上海事務所が窓口として担当します。
―他の電力会社が上海に進出している場合、差別化などは図っておられますか?
現在上海に事務所を置く日本の電力会社は九州電力だけです。仮に進出してきた場合、電力会社同士の差別化は図ることは難しいと思います。ただし弊社は2000年頃からフィリピンやメキシコにおけるIPP(独立発電事業)事業に参加し、電力会社の中では比較的早くから海外事業に目を向けていたのでそれらの経験や人材が多いと思います。また中国では5大電力会社である華電集団公司と交流協定を結び共同で事業を検討したり、国家電網から研修生を受け入れるなど積極的に交流を行うなど、このような活動を通じて中国での事業を展開しています。
―御社は中国においてどのような事業を行われているのですか?
CO2クレジットの獲得や将来のCDM(注1)案件に繋がるものを積極的に検討しており、2つの事業を中心に取組んでいます。
@内蒙古自治区における風力発電の事業の検討(窓口:北京事務所)
A中国全土を見据え、工場に対する「ESCO事業」を含む省エネのコンサルティングの実施
注1:CDM(Clean Development Mechanism:クリーン開発メカニズム)
先進国が開発途上国に技術・資金等の支援を行い温室効果ガス排出量を削減、または吸収量を増幅する事業を実施した結果、削減できた排出量の一定量を先進国の温室効果ガス排出量の削減分の一部に充当することができる制度。
また日本は京都議定書で定められた温室効果ガスを約束期間内に目標値に達成することが極めて難しいとされているので、排出権の獲得が急務である。(Wikipediaより索引)
―ESCO事業について大学生の私達でも理解できるようにご説明お願いします。
ESCO(Energy Service Company)事業とは、省エネルギーを民間の企業活動として行い、顧客にエネルギーサービスを「包括的」に提供するビジネスです。一般的な省エネ事業というものは、古くて効率の低い機器の代わりに新しく高効率な機器を売って収益を得る事業のことです。しかし、今回弊社が取り組んでいるESCO事業とは、ESCO事業者が顧客に対し、工場やビルの省エネルギーに関する「包括的」なサービスを提供し、それまでの環境を損なうことなく省エネルギー改修工事を実現し、その結果得られる省エネルギー効果を保証します。「包括的」なサービスとは以下の5点のすべて、または組み合わせによって構成されます。
@エネルギー方策発掘のための診断、コンサルティング(工場等で発生するエネルギーの使われ方を詳細に調査、診断する)
A策導入のための計画立案、設計、施工、施工管理(上記で調査したエネルギーをどのようにすれば効率的に使えるか考慮する)
B導入後の省エネルギー効果の計測・検証
C導入した設備やシステムの保守・運転管理 D事業資金の調達(ファイナンス)、金融機関のアレンジ等(工事費が高額な場合、ESCO事業者が銀行から資金の借り入れを行うこと)
また、省エネルギー改修に要した投資、金利返済、ESCO事業者への配当などは全て省エネルギーによる経費削減分でまかなわれます。契約期間終了後の経費削減分はすべて顧客の利益となるシステムです。つまり「包括的」という意味は、会社全体のエネルギーの効率利用を外部に委託することであり、ESCO事業とは省エネに対するすべての事業をESCO事業者が窓口となって、一貫して計画、実現させるという事業です。
―この度、中国で実施されるESCO事業の内容について教えてください。
今回は北京のコンサルティング会社である「緑章(北京)新能源技術有限公司」(以下、緑章)と化粧品のガラス容器を製造する「上海高雅玻璃有限公司」(以下、高雅)が3年間のESCO事業契約を締結しました。弊社と緑章はプロジェクトマネジメント契約を結び、弊社が日本で培ったノウハウを緑章に提供し、同社からフィーを頂くというものです。このような事業を進めていくには、現地の事情に通じた信頼できるパートナーを選定して事業を行うことが重要と考えています。
今回の省エネの方法は、ガラス容器を製造する際に利用する冷却空気用の送風機にインバーターを導入するというものです。これまで送風機は一定の回転数で運転し送風機のダンパーを開閉することによって風量を調整していましたが、インバーターを導入し必要な風量に応じて送風機の回転数を制御することによって、今回の計画では使用電力量を3分の1に削減することができます。
―ESCO事業における日本での実証などはございますか?
ESCO事業は日本では一般的な事業です。上記の説明のように新しい設備を導入することで大きな省エネ効果を得られたケースのほか、設備の運用方法を効率的な運用方法に変えたり、石炭から天然ガスへ燃料を変換することによって省エネルギーを実現したケースもあります。
現在、中国は燃料価格も上がり、特に夏は中国の電力需要が供給を上回るため、中国政府は多くの工場や企業に対して電力消費に制限をかけているのが現状です。省エネコンサルティングは日本が得意とする分野でもあるため、中国では潜在的なニーズはありビジネスに繋げやすいと考えています。
―ESCO関連会社が技術の乱用をする恐れはございますか?(御社のノウハウで省エネコンサルティングを行うなど)
省エネや環境対策に対して積極的な企業が増えれば中国のエネルギー事情が変わってくると思うので、それをサポートする企業が増えれば素晴らしいことですね。しかしESCO事業のように、ただ単に機器を導入するだけではなく、省エネの診断や計画、施工、管理、運転などの包括的エネルギーサービスは一筋縄ではいきません。またESCO事業経費などは省エネルギーによる経費削減分でまかなうため資金の回収リスクがあり、中国では一般の企業は手を出しにくいビジネスモデルです。
―それでは、なぜ御社はリスクを冒してまでESCO事業を行われるのですか?
誤解を招くかもしれませんが、弊社はESCO事業による大幅な黒字は求めていません。勿論赤字で行うつもりはありませんが、大きく儲けることより海外への貢献を第一に考えています。またESCO事業は提供側からすればリスクがありますが、信用のある会社であればリスクは小さく、導入する企業からすれば省エネ機器を導入しやすいというメリットがあります。現在中国企業は省エネや環境保護に対してまだ意識が低く、省エネ機器を導入するのに大きな資金が必要です。今後更に経済発展を遂げる中国の環境問題は更に深刻化していくと考えられるので、ESCO事業を通じて問題解決に貢献するということは価値があると思います。
―今後ESCO事業を中国においてどのようにビジネス展開されるご予定ですか?
上海だけでなく、中国各地で水平展開したいと考えています。その為に中国中央政府や地方政府が環境事業に理解を示し、環境意識の高い企業や工場をバックアップできる体制が必要と思います。ESCO事業を理解し、強い信頼関係を築くことができる現地の事業パートナーと共同で、中国各地のエネルギー問題解決の為に力になりたいと考えています。
<次号へ続く>
九州電力株式会社
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所長 青柳哲之氏
住所:上海市淮海中路98号 金鐘広場37楼
連絡先:(021)5385-8328 5385-8808
Fax :(021)5385-8026
インタビュアー:稲留慶司
執筆:稲留慶司
同行:浜田あゆみ、藤本大貴、新居翔太
記事校正:藤岡耕三、吉田めぐみ
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