九州電力株式会社
http://www.kyuden.co.jp
所長 青柳哲之氏
「エネルギーの最適な利用方法を提案する!」
<前号の続き>
―内蒙古自治区で検討している風力発電について簡単にご説明お願いします。
風力発電とは風の力を利用して発電機を回し発電する方式です。最近の風車の直径は約80メール、一台で2,000kW(キロワット)の電気を供給することができます。日本の場合、一般家庭1世帯あたりの使用電力は3kWですので2,000kWの風力発電機一台で約660世帯の電力が賄えます。内蒙古自治区で検討している風力発電所は全体で約5万kWなので16,000世帯の電力が賄える計算になりますが、中国の一般家庭1世帯あたりの使用電力はこれより少ないと考えられます。
また具体的な事業化には日本の場合、平均風速が6メートル/秒以上の風が必要と言われていますが、中国は草原や砂漠などでは風速が速く、広大な土地が広がっているので風力発電に関しては適地が多いと言えます。現在、中国において風力発電の規模は約200万kWですが、2010年には500万kW、2020年には3,000万kWにまで規模を拡大させる計画があるほど、中国は今風力発電に熱心です。
―風力発電の建設を実現するまでの流れを教えてください。
まず一年間かけて風速や風向がどのような状況か風況調査を行います。風力発電に最も適している環境は、風速や風向の変化が激しい気候より、絶えず一定量の風が一定方向から吹いている土地です。日本の場合、1年間の風況調査を終えた後、事業の採算性や環境への影響などを検討し、国への申請や事業会社の設立、工事の実施などを含め、実際に風況調査を開始して風車を設置し運転を開始するまでおよそ5〜6年の時間を要します。現在、中国は風力発電所の建設ラッシュで政府も建設を急いでいるため、検討時間も短く、中国においては、調査を開始して運転を開始するまでおよそ4〜5年ぐらいのイメージです。
―風力発電を建設するにおいて、中国特有の問題などはございますか?
1つ目は上記でも述べましたが事業化のスピードが要求されるということです。2つ目は中国において風力発電などの温室効果ガスの削減に繋がるようなCDM案件は、中国企業が最低でも51パーセントの株式を所有しなければならないと法律で定められています。そのため、中国で事業を進めるにはパートナーとなる中国企業との信頼関係を構築していくことが重要です。
―風力発電を行うことによって得られるメリット、デメリットを教えてください。
メリットとしては、社会全体から見れば化石燃料の消費抑制が挙げられます。また、ばいじんや温室効果ガスの削減など環境改善にもつながりますし、日本にとってもCDMによる温室効果ガス排出権の獲得につながります。デメリットとしては発電量が風任せということです。実際に風力発電で発電した電力は計画値を下回る場合があり、事業者は余裕をもった事業計画が必要です。また、中国で主力の石炭火力に比べ発電コストがかかる上、風速変動にあわせて出力が変動するので、中国の送電会社は風力発電による電力の購入を嫌うということも挙げられます。
―今後、御社は海外においてどの地域で、どのような事業展開をしていくご予定でしょうか?
中国を含むアジア、及びメキシコを含む北米において、経営資源の活用(技術的関与等)ができる新規IPP案件の発掘を目指しています。
特に、中国やインドネシアで、風力、地熱など、自然エネルギーを利用した発電事業にも注力する予定です。
更に、京都議定書の目標達成に寄与できるよう、当社の保有する高効率発電技術、脱硫・脱硝等の環境保全技術及び電力需要者側での省エネ技術を活用した省エネ・環境関連コンサルティングについても、中国などを対象に展開していきたいと考えています。
―発電においての画期的システムなどはございますか?
最新のものとしては、衛星画像を利用した発電計画支援システムがあります。このシステムは水力発電所の開発を支援するもので、開発地点の衛星画像から作成した三次元地図に地質・降雨量などの自然条件や、家屋・道路などの社会環境に関する情報を重ね合わせたデータベースをもとに、ダム建設地点を選定したり、貯水池周辺における地形変化の分布・規模や将来予測を行います。
―知られざる中国の電力事情を教えて下さい。
最も大きな割合を占めているのは火力発電所です。発電施設の割合は火力発電所が75%、水力発電所が23%、最後に原子力発電所が2%です。実際の発電量は火力発電が83%、水力発電が12%、原子力が2%です(2004年データ)。中国は石炭産出国なので石炭価格が非常に安く石炭火力発電が主な電力供給源です。つまり、温室効果ガスの排出が非常に多いといえます。すでに2007年にCO2の排出量はアメリカを抜いて世界一になったとの話もあります。また毎年10%増え続ける電力消費量により夏場や冬場の電力供給が追いつかないのも現状です。5月に起きた四川の大地震においても発電施設や、石炭を炭鉱から輸送する設備などが被害を受け、電力供給の悪化に拍車をかけています。
―原油高は御社にとってどのような影響がございますか?
燃料費の高騰により収益が悪化します。時間帯により変動する需要量に対応しているのは主に火力発電です。なぜなら揚水発電を除く水力、原子力発電の発電量は24時間一定出力で運転しているため、それ以上の需要増は主に火力発電が供給します。電気料金が据え置かれている場合、燃料費が上昇すると需要増がコスト増に繋がります。原油高の場合、石炭、天然ガスのコストも連動して上昇しますので、現在、日本の電力会社の経営環境は厳しい状況です。
―仕事上、普段の生活で心がけていることなどございますか?
普段の生活においては、健康の維持を心がけています。健康でないと体だけでなく精神面にも影響を及ぼし普段のパフォーマンスに支障をきたしてしまいます。単純なことですが、朝食をしっかり取り、適度に運動したり、気分転換でなるべく外出したりと日常から意識しています。
―休日はどのように過ごされていますか?
妻と一緒に上海のおいしいレストランやカフェに行ったり、ショッピングを楽しんだりしています。最近はゴルフを再開し、練習に精を出しています。
―愛読書などはございますか?
塩野七生著の『ローマ人の物語』という小説です。内容はローマ帝国の建国から滅亡まで書かれたものです。国の在り方や政治とはなにかを考えさせられるほか、様々な人物の生き方が描かれており、「人は見たいものしか見ない。しかし指導者は見たくないものも見なければならない。現実が見えているから次に何をすべきかが見える」というカエサルの考えや指導者としての在り方にも興味を覚えました。また中国とローマの国の在り方や文化を比較してみるのも非常に面白いですね。
―学生時代と今現在の夢を教えてください。
幼少の頃から科学や宇宙に興味がありましたので、科学者や宇宙飛行士になりたかったです。今は歴史が好きなので、世界中の世界遺産を見て回りたいです。中国はさまざまな世界遺産がありますので、時間を見つけて足を運びたいものです。
―最後に上海の留学生にメッセージをお願いします。
留学の目的は人によって様々だと思うのですが、皆さんは目的の一つとして中国語を習得するということがあると思います。しかし、語学の習得はあくまでも手段であって、最終的には中国語を使って相手に何かを伝えなければなりません。大事なことは広い知識と専門分野の取得です。中国語以外に専門分野の習得をひとつ目標にもって上海生活を送ると、今後の人生に幅が広がると思います。最後に、国と国の関係はその時の政治によって左右されますが、個人と個人の関係は揺るぎません。そのような友人を留学時代にたくさん作って、今後、中国と日本の架け橋になってくれることを期待しています。
−ありがとうございました。
九州電力株式会社
http://www.kyuden.co.jp
所長 青柳哲之氏
住所:上海市淮海中路98号 金鐘広場37楼
連絡先:(021)5385-8328 5385-8808
Fax :(021)5385-8026
インタビュアー:稲留慶司
執筆:稲留慶司
同行:浜田あゆみ、藤本大貴、新居翔太
記事校正:藤岡耕三、吉田めぐみ
<編集後記>
上海では2006年6月1日よりスーパーやコンビニで使われるレジ袋が有料化されるなど、中国において環境に対する関心は日々高まっています。今後もゴミの分別化や排気ガスの規制など色々な環境問題取り組んでいくことでしょう。そのような状況下、今回取材させていただいた九州電力様のように日本で培われた技術、知識を生かしてリーダーシップをとっていく事は、将来日本企業が世界において在るべき姿なのではないかと考えます。私達も学生としてアジアでリーダーシップをとっていき、世の中を幸せにできる為のお手伝いができたら本望です。(稲留慶司)
電力、発電に関する知識が全く無い素人の私に、事前に用意して下さった資料を参照に小学生でも分かる!?説明を丁寧にして下さったことにまず感激致しました!ありがとうございます!御社の取材を通し、電力会社の事業内容の幅広さとその面白さに圧倒されました。第34回主要国首脳会議「洞爺湖サミット」後にもありました途上国側の言い分である「先進国の結果責任に基づいて自主的に二酸化炭素排出量を減らす努力義務を途上国が負うのは身勝手」との意見からも分かる通り、これから先進国が自国の巧みな技術とノウハウを途上国にどれだけ伝授できるかが急務であり、途上国の政府並びに国民の意識をどこまで上げるかがこれからの課題だと、取材を通し改めて感じさせられました。青柳様の「環境設備にはお金がかかる。儲けはない!」と「見たくないものも見なければいけない。」という言葉に鳥肌が立ち、これからの環境問題、日中両国の関係から地球の未来まで、多くのことを考えるきっかけとなりました。貴重なお時間を割いて頂き大変ありがとうございました。(浜田あゆみ)
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